妹と娘

木谷優太

子育てを終えた親は、残りの人生をいかに過ごしていくのか悩むことも少なくないはずだ。すべては子供のために、家族のためにといった大義名分のもと日々の生活を営んでいた親にとって、子供の手が離れるということは一言では形容しがたいだろう。成長する喜びと寂しさ。親であることが辛くもあり、楽しい。いくつかの感情が同時にやってくるのではないか。

僕には7歳離れた妹がいる。父親が失踪して以来、働きに出ている母親の代わりに、僕は妹の面倒を見てきた。毎日考えることといえば、今日の献立とか冷蔵庫の中身の把握とかいくらまでに食費を抑えるとか何時にスーパーにいくとか洗濯物しまわなければとか何時には帰ってくるとか…、である。それに加え、大人になってからは、仕事もしなければならない。時間は突風に吹かれたように本当にあっという間に過ぎていくのだ。

すべての瞬間は、唯一とわかっていながらも取りこぼされてしまうものである。僕は慌ただしい日々を写真に残し、過ぎ去っていく時間を捉えたかった。けれども妹は面倒くさがってなかなか写真を撮らせてくれない。僕はいつしか長時間露光で撮影をするようになった。

僕は真面目に「子育て」に取り組んできた。しかし結局は「子育て」というロールプレイに取り組んでいたのだということを思い知らされることとなった。妹が成長し、そろそろ手がかからなくなってきたのだ。僕の核になりつつあった営みは、必要なくなってしまった。妹は僕の娘ではなく、妹なのであった。

僕には子どもを持つ可能性がある。その時こそ、子育てを写真で撮影し、記録を定着させていくことができるはずだ。僕がこれまでおこなってきた「子育て」と、未来の「子育て」。その二つのロールプレイを、家族写真にしてみることにする。